IP型 新株予約権による資⾦調達の概要
SAFEは、将来株式に転換される「コンバーティブル・エクイティ」を利用した資金調達方法で、スタートアップと投資家の双方に多くのメリットをもたらします。
この仕組みは、シリコンバレーを拠点とする米国VC「Y Combinator Management, LLC」により2013年に開発され、現在では米国でコンバーティブル・エクイティの標準となっています。ただし、元のSAFEは米国法に基づいて設計されており、日本法には適合していません。
これを受け、日本のスタートアップが効率的に資金調達を行えるよう、日本法に準拠した「SAFE型新株予約権」が設計されました。この仕組みは、M&Aやベンチャー投資に精通した森本凡碩弁護士(西村あさひ法律事務所)によって開発され、日本から新しいイノベーションを生み出す一助となることを目指しています。
SAFE型新株予約権による資⾦調達のメリット
SAFE型新株予約権を活用した資金調達は、従来の株式発行や転換社債などの方法と比較して
投資家とスタートアップの双方に以下のようなメリットを提供します。
SAFE型新株予約権の仕組み
STEP.1
投資家に対してSAFE型新株予約権を発行し、この段階(例:シードラウンド)で資金調達を完了します。この時点で、投資家は新株予約権者として登録されます。
STEP.2
次回の株式発行を伴う資金調達の際(例:シリーズAラウンド)、SAFE型新株予約権は「SAFE投資家に有利な条件で転換される仕組み」に基づき株式へと転換されます。この転換により、SAFE投資家は正式に株主となります。
STEP.3
スタートアップがM&Aを実施した場合やIPO(株式公開)を行った後、投資家は保有する株式を売却するなどして、金銭を取得する機会を得ます。これにより、投資家はリターンを実現します。
SAFE型新株予約権がSAFE投資家に有利転換される仕組み
SAFE型新株予約権では、投資家が後に参加する投資家より有利な条件で株式を取得できるよう
「評価額上限」と「ディスカウント」という仕組みが採用されています。
計算例
SAFE型新株予約権は、特定の条件下で株式への転換や金銭での清算が行われる仕組みです。
典型的なシナリオを基に、そのプロセスをわかりやすく解説することで、投資家や関係者が具体的なイメージを持ちやすくなります。
本資料では、SAFE型新株予約権が株式に転換される場合や金銭で清算される場合について、一般的な事例を用いてその流れをご紹介します。
SAFE調達時
株価:XX円(評価不要)
発行済株式総数:300,000株
発行総額:SAFE 2,000万円
SAFE個数:20個
ディスカウント:0%
評価額上限:5億円
次回株式資金調達による転換時
時価総額10億円の評価で2億円の資金調達
完全希釈化後発行済株式総数:312,500株
1株当たり株価(希釈化後):3,200円
・ディスカウントベースの転換価額:3,200円
・評価額上限ベースの転換価額:1,600円(採用)
投資家に有利な評価額上限ベースの転換価額を採用
転換株式数:払込金額2,000万÷1,600円=12,500株
(発行済株式総数(次回ラウンド株式考慮前)の4%に相当)
② M&A、上場Exitの場合
SAFE型新株予約権は、次回資金調達時に、以下の算定式で算出される転換株式数の株式に転換されます。SAFE型新株予約権は、次回の資金調達時に特定の条件に基づき株式に転換される仕組みです。
転換株式数は、評価額上限またはディスカウントレートのいずれか、投資家にとって有利な条件が適用される形で決定されます。
以下では、具体的な計算例を基に、SAFE型新株予約権がどのように株式へ転換されるかを解説します。
SAFE調達時
株価:XX円(評価不要)
発行済株式総数:300,000株
発行総額:SAFE 2,000万円
SAFE個数:20個
ディスカウント:0%
評価額上限:5億円
M&A、上場Exit時の清算
時価総額10億円
完全希釈化後発行済株式総数:312,500株
1株当たり株価(希釈化後):3,200円
・ディスカウントベースの転換価額:3,200円
・評価額上限ベースの転換価額:1,600円(採用)
→投資家に有利な評価額上限ベースの転換価額を採用
転換株式数:払込金額2,000万÷1,600円=12,500株
金銭清算:3,200円×12,500=4,000万円
③解散等の場合
SAFE型新株予約権は、次回資金調達時までに、スタートアップの解散等が発生した場合、常に、投資金額の1倍の金銭で清算されます。投資を実行した後に、スタートアップが任意で解散した場合、SAFE投資家は、1000万円の投資金額に対して、スタートアップから1000万円の金銭の支払いを受ける権利を有することになります。
提供商品・サービス
当社は、SAFE型新株予約権につき、以下の商品・サービスを提供しています。
当社システム上でのSAFE型
新株予約権導⼊書類の書式提供
当社システム上でのSAFE型新株予約権の
転換シミュレーターの提供
※登録したスタートアップ、投資家・投資家候補者が利⽤することができます。
SAFE型新株予約権の利⽤を
含む資本政策のオンライン相談
当社の提供商品・サービスに含まれないもの
(1)個別取引を前提とした個別具体的な法律⼜は税⾦に関する助⾔
(2)投資家の勧誘、紹介等
※上記(1)が必要な場合には、弁護⼠、税理⼠その他の専⾨家・専⾨機関にご相談ください。
よくあるご質問
A.当社の提供するSAFE型新株予約権の導入書類の書式は、全て弁護士レビュー済みのものであるため、特にシード期のスタートアップが当社の提供する導入書類の書式及び一般的な情報やSAFE転換シミュレーターにより、SAFE型新株予約権の仕組みを理解されている限り、弁護士に重ねて確認することは原則不要と考えております。もっとも、個別案件の中で個別具体的な法的助言・確認や特別な契約条項の修正等が必要でしたら、スタートアップの資金調達実務に十分に理解のある弁護士等の専門家にご確認ください。
A.SAFEは、起源としてシード期のスタートアップの資金調達方法/投資手段として開発されましたが、シリーズA以降でも用いることができます。実際に、日本の資金調達の実務においても、レーターステージのスタートアップが、正確な企業価値評価不要で簡易・迅速に資金調達を行うことのできるメリットを重視して、コンバーティブル・エクイティを用いて資金調達を行う例がしばしば見られます。
レーターステージのスタートアップにおいてSAFE型新株予約権を用いる場合には、既存の投資契約や既発行の種類株式等との関係に配慮する必要があるため、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
A.当社の提供するSAFE型新株予約権の書式は、最新のSAFEと同じ仕組みであるポストマネー型です。スタートアップが放出する転換株式数は、次回資金調達時のバリュエーション、評価額上限、ディスカウントレート等の変数に応じて異なるため、当社のSAFE転換シミュレーターを用いて転換株式数をシミュレーションしながら、評価額上限及びディスカウントレートを決定することをお勧めいたします。
A.SAFE型新株予約権の導入書類の英訳の用意がございます。米国等の海外投資家から資金調達をされたい場合には、個別にお問い合わせください。
本ウェブサイトに記載のとおり、米国で最も認知され、最も利用されているコンバーティブル・エクイティはSAFEであり、米国投資家はSAFEの仕組みに慣れています。SAFE型新株予約権は、日本法の下でSAFEと同じ仕組みを実現することを意図して設計されていますので、米国投資家にも分かり易い内容となっていると考えています。
スタートアップにおいて海外投資家から資金調達を行う際にSAFE型新株予約権を用いる場合には、当社のSAFE型新株予約権の書式を用いる場合であっても、スタートアップの資金調達実務に十分に理解があり、かつ、英語対応可能な弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
A.経済産業省が策定した「コンバーティブル投資手段活用ガイドライン」において、SAFEを含むコンバーティブル・エクイティによる資金調達を取り巻く状況が説明されており、コンバーティブル・エクイティの有用性が指摘されています。また、森本凡碩弁護士が執筆したニュースレターに、「米国におけるスタートアップに対するコンバーティブルエクイティを用いた資金調達と日本での導入-SAFE について-」があり、日本でのSAFEの導入につき詳細に論じられています。
A.当社の代表取締役である川添文彬が弁護士として執筆したニュースレターに、「コンバーティブル・エクイティの課税関係〜SAFE型新株予約権を題材として〜」があり、SAFE型新株予約権を含むCE型新株予約権の課税関係が詳細に論じられています。上記ニュースレターは執筆者個人の見解であり当社の見解ではなく、また、当社は、個別取引を前提とした個別具体的な税金に関する助言を提供しておりませんので、SAFE型新株予約権の課税上の扱いが、SAFE型新株予約権を用いるかどうかのご判断を左右する場合には税理士等の専門家にご相談ください。